7月8日の日本経済新聞に「内定学生引き留め躍起」の記事がありました。
2015年卒業予定者の内定率は、前年を上回る勢いです。しかし、来春入社予定の内定者が入社前に内定辞退をしてしまうというのです。
理由はさまざま。大学の学生の場合、内定通知を受け取ってから入社までは1年以上期間が空きます。その期間に他の企業に目移りしたり、本命の企業の採用選考が遅かったため、その前に他社の就職試験を受けていたり、学生にとっては再挑戦の機会が増えているのも原因のひとつかもしれません。
また、同じ学生が多数の求人に応募した結果、多数の企業からの内定が出てしまうことにも原因があるようです。優秀な人材となり得る学生の取り合いになってしまっている状態です。
内定辞退者が出ないようにと企業側も対策を始めました。
このような現象は、今年に限った事ではなく、数年前から企業側も対策を練っているようです。【企業の内定者つなぎとめの主な対策】参照
・アルバイトなどで、社内に早くなじませる。
・内定者同士を会わせ、一体感を持たせる。
・幹部、社員などに会わせ、入社動機を確固させる。
・親御さん向けの情報配信を行う。
・内定者フォロー研修などで、入社までのモチベーション維持を図る。
など、手法はさまざまで、最近では、企業向けの内定辞退防止セミナーも盛んに行われています。どの手法にかんしてもこれで万全ということはなく、御社にあった内定者フォローをして行かなければいけないのですが、たとえ内定者フォロー対策をしても、辞退者は出てしまうことはあります。企業側も内定辞退者が出ることを想定はしていても、半数以上の内定者から辞退されたりすれば、あらたに採用するためのコストも発生してしまいます。辞退者を出さないためには、内定後のフォローに加え、内定を出す前の選考過程の見直しが必要なのかもしれません。
内定通知を出すということは、条件付きの労働契約が成立しているとみなされます。これを「始期付解約権留保付労働契約」といいます。原則としては、新卒の場合、卒業直後に就労開始の時期として、就労開始時期まで一定の条件によって解約権を行使できるという条件付きの労働契約となります。
そのため、内定辞退は労働契約の解約として、民法上では意思を伝えてから2週間の予告期間を置くことで辞退することができるとしています。
ただし、内定辞退をする場合にもトラブルが発生することがあります。内定辞退を申し出た学生に対して、人事担当者が感情的に対応してしまうケースも実際にあり問題とされました。
① 内定辞退をするA社にB社に入社することを伝えたら、B社はA社の取引先だったため、A社から圧力がかけられ、B社の内定も失ってしまった。
② C社の内定辞退を申し出たところ、椅子に座らされ、人事数名に1時間におよぶ罵詈雑言を浴びせられた。
③ D社に内定辞退を伝えたところ、その場は一旦保留させられたが、後日、人事が校門で待っていて、教授のところへ案内させられ、人事担当者が教授へ挨拶をして帰っていった。お世話になった教授を裏切ることができないため、内定辞退をとりやめ入社を決意した。
など、実際に学生たちが体験したできことです。
たとえ、内定者を引き止めたとしても①~③のような方法では、企業側にとっても、内定者にとっても信頼感は生れず、良い採用とはならないでしょう。内定辞退を決意された以上、強引な引き止めは両者に取って不幸な結果をもたらすことになります。
学生から内定辞退の連絡を受けたら、御社を辞退する理由など答えてくれる範囲で話を聞き、次の採用に活かしていく方法へ検討されることもおすすめします。
就職活動をしている学生側にとっても、複数の就職試験を受けている以上、内定辞退は避けられません。しかし内定辞退することにもリスクを負うこともあるようです。
こじれたまま辞退した場合は、印象が悪いままになっています。希なケースだと思いますが、取引先が辞退した会社で、挨拶に行くと「仕事はやらない」と言われてしまったケースも。
就職活動中に企業側からお世話になることもあります。そこを辞退することで罪悪感に陥り、次の就職活動に支障が出てしまう学生もいるそうです。
辞退したあと、先輩や友人に「なんで、そんなに良いところを辞退したの」といわれ、後悔するパターン。辞退すると決めてからは早急に先方に連絡することは必要ですが、周囲の意見も聞いてから決定したほうが良いこともあります。
学生も辞退を報告するときは、相当の緊張感と不安感をもって連絡をしてきているはずです。本来であれば、内定を出した時点でそのまま入社してくれることが一番望ましいのですが、内定者が誠意をもって辞退することを連絡してきたら、その気持ちをうけとり、企業側も紳士的に対応していかなければいけないでしょう。
新卒者等採用にたいしては、企業の支援がなくてはならないものです。
企業にとって、「採用すること」 内定者にとって「入社する」ことが目標ではなく、その後の「採用後・入社後」の目標をしっかりと持ち続けなければいけません。
長野県の雇用情勢は 平成26年6月の時点で、有効求人倍率1.09倍、上田地域では0.88倍と下回っています。(H26.7.29長野労働局発表より)
9月に入ると高校生の就職活動が始まります。
新卒者の採用だけではなく、転職者および、在職している優秀な社員が離れてかないためにも、魅力ある企業の体質創りに力を入れていかなければいけないでしょう。大企業だけでなく、中小企業だからこそできるブランド力を高め、よりよい労働環境を作っていくことも重要となるようです。
==参考資料==
<長野県雇用情勢>
<企業側の助成金>
トライアル雇用奨励金
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000038725.pdf
<キャリアアップ助成金>
その他、税制制度の適用もご検討ください。