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今月の特集

過重労働の問題点

カテゴリ:今月の特集 投稿日:2016年04月15日

ことしも4月になってしまいました。

上田城の千本桜も満開になり、観光客が増加している様子。

大渋滞で近くに行くことすらできません

 

さて、平成27年11月が「過労死等防止啓発月間」として定められ、平成27年11月は「過重労働解消キャンペーン」が実施され、各地でセミナーなども開催されて参加された事業主様も多いかと思います。

 過重労働や長時間労働については、昔から改善が行われていましたが、現在、労働者人口の減少による人手不足から、なかなか改善されていない現実があります。

平成27年4月1日より「過重労働撲滅特別対策班(通称:かとく)」が東京労働局と大阪労働局に設置され、過重労働撲滅に取り組んでいます。

最近では、時間外および休日労働に関する協定書(36協定)を正しく届出ていても摘発されています。

 

<ワタミ過重労働により女性従業員自殺事件>

居酒屋チェーン「ワタミ」子会社の正社員だった女性従業員(当時26)が2008年に過労自殺したの は会社側の責任だとして、遺族がワタミや創業者の渡辺美樹参院議員らに損害賠償約1億5千万 円を求めた訴訟は8日、東京地裁(吉田徹裁判長)で和解が成立した。ワタミ側が責任を認め約1 億3千万円を支払い、謝罪する。社員らの長時間労働防止策も盛り込んだ。 訴状によると、女性従業員は08年4月にワタミフードサービス (現ワタミ)に入社し、神奈川県内の店舗に配属された。休 日もほとんど取れず、連日、午後から深夜や早朝にかけて の長時間勤務を強いられ、同年6月に自殺した。残業は月 140時間以上で、過重労働が原因で適応障害を発病したとして労災認定された。 女性従業員の遺族は13年、ワタミ側が安全配慮義務を怠ったのが自殺の原因として提訴し、ワタミ側自殺は過労が原因と法的責任を認め、損害賠償として約1億3300万円を支払うことで和解した。

(参考文献:日経新聞 平成27年12月8日)

 

<ドン・キホーテ違法長時間労働により書類送検>

大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」(本社・東京都目黒区)が従業員に違法な長時間労働をさせたとして、東京労働局過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)は1月28日、労働基準法違反容疑で法人としての同社と支社長ら8人を東京地検に書類送検した。

東京労働局によると、同社は201410月から15年3月までに、都内の複数の店舗で従業員計6人に対し、労基法に基づく労使協定(三六協定)で定めた上限を超える時間外労働をさせた疑い。協定では3カ月で120時間が上限だったが、最長で415時間45分の時間外労働をさせていたという。

(参考文献:時事通信)

 

<ABCマート 書類送検>

2015年7月、労使協定を超える残業をさせていた労働基準法違反の容疑として東京労働局はエービーシー・マートと同社労務担当役員、店長2人を書類送検した。2014年4~5月、従業員4人に対して、法定時間や労使協定で定めた上限(月79時間)を超える、97112時間の残業をさせていた疑い。賃金の未払いはなく、残業代はすべて支給していた。

 

時間外労働に対して36協定を締結していても、それを超える時間外労働があれば、労働基準監督署は違法として、罰則を適用されることになります。

また、時間外労働に対して割増賃金を不備なく支払っていたとしても、時間外労働をさせてよいことにはなりません。

これらの時間外労働で裁判になったり、労働基準法違反として罰則が適用されたりする共通点としては、労基署が定めている時間外労働を大幅に超え、健康被害が出てしまうほどの長時間労働を行わせていたことに原因があります。

長時間労働を行なった労働者すべてに健康被害が出てしまうとは限りませんが、最近では20時間未満の時間外労働であっても、何かしらの精神的な健康被害を患ってしまうケースも増えてきているようです。

時間外労働労災件数

「厚生労働省:平成26年度 過労死等の労災補償状況」

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000089447.html

 

長時間労働はいけない

もちろん、サービス残業(割増賃金未払い)はもっといけない。

過重労働はいけないことはわかっていても、急激に労働環境を変更することは、事業主にとっても大変なことだと思います。

少しずつ、会社の負担にならない部分から、取り組んでみることが必要だと思います。

 

そのためには、本当に、時間外労働が必要なのかどうかを検討してみなければいけません。

だいぶ前にテレビのCMにもなった「5時から男の・・・」のような仕事をしていませんか?

定時の時間内は、適当に仕事をし、定時を過ぎてから一生懸命仕事をする。または、仕事もないのに、会社に居残って仕事をしているふりをしている。タイムカードの打刻を少しでも遅くしようと、仕事のあと片付けに時間をかけている社員がいる。。。などなど。

チェックしてみましょう。

 

時間外労働が発生する原因はいくつかあります。

1.業務量

  これは人員不足ですが、人ひとり雇用して、仕事を教えて、一人前になるまでの時間を考えると、今いる従業員で何とかしたいと考える事業主様も多いと思いますが、人を育てられるのは人だけです。

 育ててくれる人財(今いる従業員)がいるときこそが、新しい人材(新入社員、未経験社員)を、優秀な人財に育ててもらうチャンスかもしれません。

 

2.業務の不効率

  人間の能力には限界はないそうですが、製造業など物を作る場合には、1日で生産できる製品の数や量は限界があります。

 その限界を超えた注文を受けてしまったり、生産数を増やたりしてしまうと、やはり時間は足りません。

 1日8時間で、会社で作れる数量を把握し、取引先にも十分に理解してもらいましょう。

 また、業務の効率化を図ることも必要です。

 ある製造工場の製造ラインで、製品を作ったあと、検査して、段ボールに梱包して、段ボールを一定の数に積み上げて倉庫に運ぶ作業がありました。

 ①機械からでてくる製品を検査室に台車で運びます。 片道30秒

 ②検査が終わった製品を梱包するために、①の機械の横に戻します。 片道30秒

 ③梱包した段ボールを②の検査室の横の製品保管場所まで運び、パレットに積み上げていきます。  片道30秒

 ④一定の数に積みあがったところでフォークリフトで段ボールを倉庫に運びます。

  ①~④の流れの改善に取り組みました。

 ①→②ここを改善。機械の横まで運ぶのではなく、検査室の横にある製品保管場所に梱包場所を確保。③保管場所で梱包しているため移動時間なし→④フォークリフトで倉庫に運ぶ。

 この結果1分間が短縮されました。1日で換算すれば、それほど大きな違いはないかもしれませんが、

1日30回分として30分間。

1週間5日間勤務として2.5時間。

1か月20日勤務として10時間・・・1年間だと120時間の短縮となります。

塵も積もれば・・・ですね。

 1か月10時間程度の残業を行っていた会社であれば、時間外労働は無くなる可能性が出てきます。

 

 3.従業員の能力不足

 新入社員と、数年間勤務している社員と比べれば、どうしても新入社員の方が、どんな業務をしてもらっても時間がかかるのは仕方ないことです。でも、これは数か月から1年程度で解消されます。

しかし、何年勤務しても能力があまり向上していない社員がたまにいます。

でも、その社員さんにも得意分野があります。今の業務は本人に向いていない仕事なのかもしれません。本当に本人に合っている業務なのか(やりたい仕事とは限らない)を検討しなければいけないのかもしれません。人事異動や配置転換で、「できる」仕事を、従業員本人が見つけ出さなければいけません。「できない(したくない仕事ではない)」仕事は、「できる」仕事より、覚えるのも時間がかかります。

国語は得意だけど、数学は苦手という人は、漢字は簡単に覚えるけど、数学の公式を覚えるのには時間がかかるのと同じです。

わたしは、社会が苦手で地理は大苦手。方向音痴のため、カーナビが案内してくれても道に迷っている次第です。(好きになれる方法を知っていれば、今頃苦労していないだろうなといつも思っています。

それでも、克服しようと頑張っている社員がいれば、少し応援していただきたいと思います。

 

 4.労働時間を把握していない

 これは、問題外です。本当に必要な時間がわからないと対策もできません。

 会社の業務を行うのに、必要となる時間をしっかりと管理しましょう。

 本当は、10人でできる仕事を15人で対応していたなんてこともありますよ。

 

① 従業員の実労働時間を把握しましょう

  定時に終了して変えることができるけど、その間の休憩時間が取れていないということもありますので、チェックしましょう。

  休憩は、原則、従業員一斉にとらせなければいけませんが、一斉に与えることができない場合は、交替制や、時間差による休憩を与えることも出来ます。会社に合った労働時間の設定を考えましょう。

 

②時間外労働がありますか?

実労働時間を把握できたら、時間外労働があるかどうかを確認してみましょう。

1日にどの程度、時間外労働をしているのか。

曜日や、週、月で時間外労働がどのように増減しているか比較してみましょう。

月曜日に時間外労働が集中している、月末に時間外労働が集中している。など、決まったサイクルがあるかもしれません。その場合は、変形労働時間制を適用することで、暇なときは早く帰ることができますし、時間外労働の削減も行えます。

一時的な業務の繁忙であれば、パートアルバイトや派遣社員の活用で対応ができるかもしれません。

 長時間労働を避けるために、2交替制や3交替制の導入なども視野に入れてみてください。

変形労働時間制を適用する場合は、就業規則の変更や労使協定が必要となりますので、十分な検討をしてください。

毎日3時間以上も時間外労働があり、今後も継続的に発生すると見込まれるときは、人手不足なのかもしれません。

 

③時間外労働が必要な原因を把握していますか?

どのような業種であっても、どうしてもその日に行わなければいけない業務も有りますが、社員によっては、時間稼ぎをしている者もいます。

 ある社員が、毎日定時に仕事を終わらせているのに、タイムカードの時間が、定時の時刻よりも1時間も遅いということがわかりました。原因を調査したところ、定時で席を離れた従業員は、社内の喫煙所で煙草をすって、雑談。そのあと、自分の席に戻って新聞を読み、ひとしきり読み終わったあとタイムカードを押して社内を出る。この時間が約1時間。

この1時間に対して、会社は割増賃金を支払っていることになります。

 所定労働時間を超えても行わなわなければいけない業務かどうか確認することが必要です。

 無駄な時間外労働をさせないために、事前申告制や、許可制を導入している会社は少なくありません。

 ただ、事前申告制にしても、許可制にしても、その業務内容を把握していないと意味がありません。

 「明日の午前中の打ち合わせの書類作りが間に合わないため残業します。」と報告してきた部下がいるとします。簡単に「OK」をだしたら、徹夜で仕事をしていたということもおこり得ます。

しかし、その時に、どこまで出来ていて、あとどのくらいの時間が必要なのかを申告させることで、必要な時間と業務量がわかります。「あと2時間で仕上げられるように頑張って」と伝えるだけでも、深夜まで残っているということは減ると思います。

 

④特定の従業員のみに時間外労働がありませんか?

 ある部署には数名の従業員がいるのに、残業するのはいつもDさん。ということはありませんか?業務量が偏っている可能性もありますし、③の時間稼ぎということもあります。

 やはり、本当に必要な労働時間を管理していかなければいけません。

 

 

時間外労働をなくすことは難しいですが、減らすことはできると思います。

大切な従業員が、健康で1日でも長く気持ちよく勤務してもらえる労働環境づくりをしていきましょう。36協定の届出も忘れずに行いましょう。